宿屋の店主、日々のつぶやき。

旅好きが高じて宿を開業、自由な時間を求めて今日ももがいております。

ベイルート。戦争の傷跡をみる。




 ガンバの試合のあった街、ホムスからレバノンへ向かった。
 12人乗り合いのセルビスはなかなか埋まらず、二時間待っても6人しか集まらない。運転手はしぶしぶ車を走らせた。

 シリアとレバノンの国境はとても簡素なもので、拍子抜けするくらいあっさりと入国できた。
 ビザも一ヶ月ビザが無料で発行された。
 国境を抜けてしばらくは、見るからに貧しく、治安の悪そうな村の間を通って行く。
 家々は板を立て、布を張っただけのものも多い。おそらくはパレスチナ難民のキャンプだろう。近づきがたい雰囲気を感じた。

 そこを抜けると眼前に地中海がひらけてくる。
 幹線道路は地中海沿いに南北を走っており、幹線道路の両脇には装甲車や兵士が検問をしている。
 その目線の先に、一瞬凍りついた。
 海沿いの丘の上に瓦礫の山が見えた。
 にわかにそれは街をかたどっている。
 建物に凄まじい数の弾痕と爆撃跡。建物はかろうじて建物らしさを保っている。
 あんな街の廃墟は見たことがなかった。いや、あるいは人が今でも住んでいるのかもしれないが。
 セルビスは高速度で道路を走っていたから、一瞬目に入っただけの光景だったが、強烈な印象を残した。
 
 ホムスから4時間ほどでベイルートへ着いた。
 ベイルートには、おそらく旅人を楽しませてくれるようなものも、遺跡もない。
 バランスの取れていない街だった。
 旧市街という名の真新しい建築物とブランドショップ。
 最高級車とボロッボロのタクシー。
 弾痕だらけのビルディングにピッカピカのビル。
 結婚式と、それを囲む兵士と装甲車。

 活力があるのやらないのやら、よく分からない。
 内戦やイスラエルとの戦争を経て、これからどのように復活してゆくのか。
 それに興味がある。