トリポリ。危険地帯をゆく。
ベイルートから北へ90キロほど北上すると、トリポリというレバノン第二の街に来る。
内戦の被害も少ないらしく、古いモスクや町並み、城なども残っていた。
旧市街の商店街は賑やかだったが、中央の公園にはやはり兵士の姿がたえないし、警察車両も多い。
丘の上にそびえる十字軍の城には装甲車が控えており、場内にも兵隊がたむろしている。
それでも町の人間は陽気で、気軽に声をかけてきたり、おちょくってきたりする。
兵隊も俺を東洋人とみるや、「チャイナ?ジャパン?」と声をかけてくる。
人々とのやり取りだけでは殺伐さは感じないが。
トリポリを拠点に、世界遺産登録されているレバノン杉を見に行った。
まあ普通の杉林なのだが、1200本ほどにまで減少した樹齢1000~2000年の大木はやはり見事だった。
そこへはトリポリからバスに2時間ほど揺られてゆくのだが、途中軍の兵士で半分近くの席は埋まった。少し物々しい。
人々はやはり親切で、道を歩いていると声をかけてきて車に乗せていってくれたりする。
こういった事と、多くの兵隊の姿はなんとなくしっくり来ない。
街に戻りインターネットカフェでネットを開いた。
ふと安全情報が気になった。
以前はずいぶんと細かくチェックしていたのだが、最近怠りがちであった。
見てみると、滞在しているトリポリでは最近爆弾テロがあり40人ほどが死んでいる。
そしてこの日通ったレバノン杉までの道のり。
そこでも2、3日前に政府反対勢力と国軍の間で銃撃戦があったらしい。
兵士が多いわけである。
危険な場所であっても、旅行は比較的簡単だ。
現地まで行ってみるとそう思う。
そういったところでも旅行者の話を聞いたりしているうちに、なんとなく、平気に感じてしまうのだ。
こういった危機意識の希薄が、突然思わぬ結果を招いたりするのだろう。
ベイルートで同い年のフリーカメラマンに会った。
彼はパレスチナ難民キャンプを取材して、写真を撮り続けていたのだが、郊外の難民キャンプでは日常的に銃は保有され、発砲事件も起こっているらしい。
そしてレバノンに潜伏している過激派はアルカイーダとのつながりも噂されているらしい。
中東に来てから、いろんな疑問を投げつけられる。
そしていろんなことを知りたくなってくる。
もっと深部に行きたくなってしまったりする。
好奇心を戒めつつ、旅をしてゆかなければと思った。