宿屋の店主、日々のつぶやき。

旅好きが高じて宿を開業、自由な時間を求めて今日ももがいております。

ラダック。ラマユル、月の世界。




 バスがうなり声を上げて坂道を駆け上ると、目の前には真っ青な空と岩と砂、切り立った崖。
 まるで異世界。月の表面にでも着たかのようである。

 レーから北西へ120キロ。ラマユル村へバスは向かう。
 道の左側は底まで100メートルはあろうかという切り立った崖。右側には今にも落っこちてきそうな 岩と砂がむき出している。
 強烈な日差しが乾燥した空気を貫いて肌を焦がす。
 インダス川沿いにちらほら見られた緑は徐々に数を減らしてゆく。
 川の流れは荒々しく、石灰を含んでいるのか白くにごっている。

 砂埃を巻き上げて、バスは最後の坂道を登る。
 すると、崖にへばりつくように家々が見え始めた。
 レーから6時間、ラマユル村へ到着である。
 
 薄い空気に息を切らしながらさらに坂道を登る。
 通り過ぎる家々は石造りで出来た簡素な長方形。その家々の頭上には大きな仏塔とゴンパがどっしりと そびえている。

 坂の上にはボロいゲストハウスが一軒。
 ほかの家同様、石造りで砂にまみれている。
 案内された部屋は100ルピーで、牢獄のような石の部屋に、簡単なベッドがひとつ。
 部屋は砂まみれで、壁に手をつけることも出来ない。
 しかし大きな窓がついており、そこから眺めることの出来る景色が多少気を和ませる。

 ラマユルは小さな村だ。
 11世紀にチベット仏教の修行僧がここに仏教を広めた。
 そのゴンパ(僧院)へむかう。
 やたら人が多い。
 道沿いには出店が立ち並び、子供らは輪投げやおもちゃに夢中。それを見つめる屋台の親父はなぜか厳 しい目つき。
 ゴンパの周りはすでにすさまじい人だ。
 どうやら運良くお祭りに出くわしたらしい。
 皆の服装は、まるでスタジオジブリである。
 ラピュタナウシカに出てくるばあちゃんやじいちゃんみたいな服を着て、女性は髪をみつあみに結っ ている。
 目の前をラピュタにでてくる盗賊のボスのおばさんみたいのが通った。
 見慣れない衣装に少々興奮する。

 この日はもう夕方で、みな帰るところであったが、明日も祭りがあることを聞き、テンションあがる。
 20時頃にようやく日が落ちると、あの薄汚かったゲストハウスの屋上は、すさまじい星のプラネタリ ウムに早変わりである。
 邦楽一曲聴き終えるまでに7、8個の流れ星が見えたであろうか。
 今までに見たことのない尾の長さの流れ星を見た。
 あれなら願い事、3回お願いできる。