宿屋の店主、日々のつぶやき。

旅好きが高じて宿を開業、自由な時間を求めて今日ももがいております。

ハバナ。時が止まった。




 メキシコシティを早朝6時半に飛び立ち、2時間後に着いたのはキューバの首都ハバナである。

 機内では期待していなかったのに簡単な機内食が出た。
 アメリカンでは3時間半のフライトでも出なかったのに、、、、。

 空港は綺麗だったが閑散としていて、首都の空港とは思えないほどだった。
 簡単なショーケースに地図とかゲバラの本が並べてあり、ほんっとーーにやる気のなさそうな黒人のおばさんが、眠りながら店番をやっていた。

 荷物を受け取るゲートでは、なぜか日本語で「ロストバゲージ受付け」という看板のあるコーナーがあった。

 はっ??  なくなること前提?

 キューバへフライとした旅人の3割ほどが空港で荷物を失っているという情報を得ていたため、荷物をアミーゴへ預け、自分は小さなバッグひとつでフライとした。
 この看板を見て、やっぱ預けてきて正解だったと確信。

 空港から街中まではタクシーしか移動手段はない。
 ちょいと歩いてゆけば公共バスを捕まえることができるのだが、まれに外国人は拒否されるそうだ。
 
 キューバは1958年以来の社会主義国で、2008年にフィデルカストロから弟のラウルに代わってからは、経済の自由化が進んでいるらしい。
 しかしながら、キューバ人民と外国人の線引きは明確になされていて、キューバ人は人民ペソという通貨単位を主に使い、外国人はセウセという通貨を使う。
 ちなみに1セウセはほぼ1ドルで、1セウセは24キューバペソだ。

 5ペソでハム入りのハンバーガーが買え、公共バスが5ペソ、なかなかおいしいソフトクリームが2ペソ、人民食堂の鶏肉とご飯で20ペソのことを思えば、物価がいかに安いか。

 しかしペソはなかなか使わせてくれない。
 それこそダウンタウン行って、屋台とかでないと使えないのだ。

 それを思うと、空港から町へのタクシー代は16セウセ(16ドル)なんだから、キューバからしたらべらぼうに高いことになるのだ。

 とりあえずホワイトハウスそっくりの国会議事堂でタクシーを降り、宿を探した。
 ガイドブックなんかには30ドルくらいからの宿しか載っていないのだが、実はキューバには民宿がたくさんある。
 青いイカリのような模様がついたドアは民宿をやっていて、そこが10セウセから25セウセとなかなか安い。
 旅人から人気の高かったホアキナさんの家を探し出し、そこへ泊まった。

 ホアキナさんはほんの少しの英語と、とても大きな体と、豊かな笑顔が素敵な白人のおばさんだった。
 10セウセと安いこともあって、キューバの旅中ずっとこの宿にお世話になった。
 
 日本人もちょこちょこ泊まっていて、彼らとともに町歩きをした。
 
 ハバナの町はやはりレトロな町で、黄色や赤のクラシックカーがバンバン走っていたりする。
 町はそれまで見てきたどこよりも古めかしくて、またその情景を保存するでもなく、そのなかで溶け込んで生活している。
 公園ではなにやらおじさんたちが円を作って激しく言い合っている。
 ふと大学で日本語を学んでいたという青年に声をかけられ、あれは何のケンカなのかと聞いてみると、あれは単に昨日の野球の話をしているだけなのだという。
 
 すれ違う若いやつらは口々に「チーーノ!チーーノ!」を連発してくる。
 残念ながらここでも中国は不人気なのか。

 しかし経済の自由化が少しずつ始まっているというが、町の商店に目をやっても、物がない。
 
 ながーーい陳列棚に飴が丁寧に一列に並べられていたり、「家具屋」にはプラスチック製の丸い巣が並び、棚にはガラスのコップがずらりと一種類だけ並んでいたり。

 期待通り、わけのわからん国である。