宿屋の店主、日々のつぶやき。

旅好きが高じて宿を開業、自由な時間を求めて今日ももがいております。

ラパス。プロレスを楽しむ。




 なんだかんだと、ボリビアは好きだった。

 まず、飯がうまい。
 小汚い屋台はそのあたりにあって、鶏肉や牛肉で薄い目のだしをとった、肉や野菜がごろごろ入ったスープ(ソパ)や、ご飯とサラダの上に薄く切ったステーキや、カツをのせている定食、トウモロコシを絞ったジュース、揚げたてのドーナツに砂糖を振りかけたやつ、、、。
 バリエーションが多く、飽きることがない。
 1ドルから2ドル出せば、それなりの店でおいしいコーヒーを飲むことができる。

 何度も同じ店に出入りしていると、店のインディヘナのおばさんや女の子、おっさんたちと笑顔を交わすようになる。
 ボリビア人ははにかみ屋で、なれなれしくもない。
 程よい距離感と親切心が、日本人の俺には心地よかった。

 町の人口の8割は肌が黒く、どちらかといえばアジア人に顔の近いインディヘナの原住民で、カラフルな服や、各々を主張している特徴的な帽子は、ラパスの街の風景と一体化して、いい調和をみせている。
 そして雑然とした街並みの中にも、西欧風の建築物や教会が立ち並んでいる。
 
 ラパスはすり鉢状になった山間の、一番底の部分に当たる。
 底から這い上がっていくと、貧民街になってゆく。
 仕事を求めて地方から出てきた人々が、山々の側面部に家を作っていき、そこが一つの街を形成している。
 ラパス中心部から車で15分ほどのぼると、エルアルトという土地になる。

 ここへ、ルチャリブレというプロレスを観にいった。
 貧民街で、かなり治安の悪いといわれているところである。

 宿の日本人4人で、日曜日と木曜日のみ開かれている古着市へ寄った。
 プロレス場のすぐ近くである。
 広い敷地に屋台が並び、古着が無造作に積んであった。
 サッカー用のジャージから、靴、変なシャツ、スーツ、スウェットまで、かなりのものが売られている。
 そこで十分日本でも着れる1ドルのスウェットを買ったのだが、同行していた19歳の女の子Aちゃんは、熱心にインディヘナの帽子を探していた。
 やめなさいって、という男性陣を尻目に、結構しっかりとしたインディヘナの帽子を購入。すぐさま着用して屋台を練り歩いている。

 すると、面白いことに、ボリビア人たちの反応がメチャクチャいい。
 女の子にワーーッ!と人が群がってきて、アイドルのような感じになっている。
 小さな女の子はキャーキャー寄ってくるし、通り過ぎたおばさんはAちゃんを二度見して、
 「あんた、かわいいねえー!」
 と、わざわざ寄ってくる。
 男性たちもほほえましい表情を浮かべている。
 東洋人がそのハットをしたのがよほど珍しいのか、その帽子がよほどいいものなのか、それとも単にAちゃんが可愛いのかよくわからない。
 
 そのままプロレス観戦。
 外国人は8ドルほどでリングサイド席へ招かれる。
 場内に入ってからもその女の子にはボリビア人が寄ってくる。
 ある小さな女の子は、お下げにしたほうが絶対可愛い!といって、Aちゃんの髪をみつあみのお下げにしてしまった。
 1試合目は、とんでもないよぼよぼのおじいちゃんの登場である。
 とても戦える体ではない。
 それでも一応、善、悪の役割分担があるようで、観客からはそのおじいちゃんにブーイングが飛ぶ。
 ポップコーンを投げるおばさんもいる。
 案の定じいさんはなすすべなくやられた。
 多分みのもんたのほうが強い。
 
 数試合が終わり、観客のボルテージが上がる。
 いよいよ、インディヘナのおばさんの登場である。
 トランスミュージックとともに、フツーーにその辺の屋台にいそうなインディヘナのおばさんが、踊りながら入ってきた。
 そして帽子をかぶったAちゃんの手を取り、踊り始めるではないか!
 帽子の、ものすごい効力である。
 
 おばさんのお相手は、ドラキュラみたいな恰好をしたお兄さん。
 観客から大ブーイングが起きる。ドラキュラ兄さんは嬉しそうだ。
 
 あんな恰好で戦えるのかいね。
 とか思う心配もないほど、おばさんはリング上で躍動する。
 スカートがくるくると舞う。
 跳ねるおばさん。ドラキュラ兄さんの首に足をからませ、くるくるまわってリングに叩きつけたりしている。
 兄さんも女相手とはいえ容赦なく腹にパンチを打ち込む。おいおい。
 結局インディヘナのおばさんが3カウントを取って勝利。観客大興奮のまま終了となった。
 終わった後の人々のスッキリした表情が面白い。
 みな素朴な娯楽を楽しんでいる。

 試合が終わったころにはあたり暗くなっていて、すり鉢のてっぺんにあたるエルアルト地区からは、ラパスの夜景がきれいに一望できた。