宿屋の店主、日々のつぶやき。

旅好きが高じて宿を開業、自由な時間を求めて今日ももがいております。

バリローチェ。湖がきれい。きれいすぎる。




 いい加減、バス移動にうんざりしてきた。
 カラファテからそのまま北上してバリローチェに向かおうと思っていた。
 国道40号線のその道は、景観が美しいことから人気がある。
 そのため切符を買いにいったところ3日待ちだと言われてしまった。
 日程的に無理が利かない状態だったため、やむなく再びリオガジェゴスまで移動して、海岸沿いを走って北上するという、大回りルートを取らなくてはならなくなった。
 合計30時間以上のバス移動。
 ああしんどい。
 しかし贅沢は言ってられない。
 日本のバスよりも乗り心地やサービスはよいのだから。

 カラファテを朝3時に出発して、目的地のバリローチェに到着したのは昼の3時である。
 アンデスの麓にある南米のスイス。らしい。
 怪しいねえなんて思いながら、バスを降りて町を歩く。
 目の前には広くて透き通った湖が広がっている。
 うむ、きれいや。そうとしか言いようがない。

 次の日に町から10キロほど離れた湖畔沿いで自転車を借りた。
 ひたすら山道をこぎまくる。
 道端に咲いている花が、強い日差しを浴びて強烈な黄色を放っている。
 数日前にウスアイアで30キロ以上チャリを漕いでいたおかげで、筋肉痛に犯されることはなさそうだ。

 坂を越え、ちょっとした湖の港にさしかかる。
 そこで昼飯のドリトスを食らい、さらに先に進む。
 チャリンコ屋のお姉さんに教えてもらったオススメスポットまでさらに漕いでゆき、そこで休憩した。
 そこはまさにスイス! って、行ったことないけど。

 あたりは森に囲まれて、一切の人工的な音を断っている。
 水は驚くほど透き通っていて、深部はエメラルドグリーンだ。
 湾になっているため、波も一切立っていない。
 静寂のこの場を支配していたのはキツツキが木をたたいている音だ。
 まるで大工さんのように規則正しくコツコツと音を立てている。
 すぐ近くに3匹のキツツキが居る。
 こちらが近づいていっても逃げる気配はない。
 さらに無数の鳥の鳴き声がする。
 時折水面から魚が跳ねる。そしてその音が響く。
 空はムチャクチャ晴れていて、ムチャクチャきれいな湖の向こうに、雪のかかった山が見える。
 マイナスイオンでまくり。扇風機の「マイナスイオン送風」よりはるかにあると思う。

 山の山頂に差し掛かり、そこから湖を一望する。
 すごい。きれい。きれいすぎる!
 ここからアンデスを越えて一気にチリのサンティアゴまで行くのだが、パタゴニアは最後の最後まですごかった。