宿屋の店主、日々のつぶやき。

旅好きが高じて宿を開業、自由な時間を求めて今日ももがいております。

マゼラン海峡を越える。



プエルトマドリンを午前11時に出発。
バスは再びパタゴニアのただっぴろい大地を激走する。
はるか先にの地平線に真っすぐに伸びた道路が吸い込まれている。
ホンマ、でかい。
ってか、ほかに何にもない。

車内は暴力的な音量でアメリカ映画が流れ、眠り、起きて、早朝6時、リオガジェゴスという街に到着する。
バスターミナルでそのままウスアイア行きのチケットを購入。
午前8時半に再びバスに乗った。
ここまででブエノスアイレスから約2400キロ程移動したことになる。

3時間ほど南下すると、チリとの国境にさしかかる。
この辺の地理は、アルゼンチンとチリの領土が交差するようになっていて、国境の形としては実にいびつな形をしている。
アルゼンチン出国を終え、チリ入国を済ませると間もなく、バスの前に流れの早い、エメラルドグリーンな色の海にぶち当たる。
マゼラン海峡だ。
ここを渡るとフエゴ島だ。
そこの南端部にウスアイアはある。

バスは簡素なフェリーに詰められた。フェリーはその姿に似合わぬ高速で荒波の中へ突っ込んでゆく。
客は皆甲板へ出て、写真撮影を始める。
御多分に漏れず、俺もカメラを手に甲板へ上った。
荒涼とした殺風景な風景に、海、そのすぐ向う側にまた大地が広がる。
あーーマゼラン海峡やなあ。
と浸っていた殺那、大波がフェリーを襲った。
ぎゃあーーー! という人々の叫びが痛い。
体じゅうずぶ濡れで寒い。そしてカメラ壊す。くそ。マゼランめ。

海を渡り、しばらくゆくと、再びイミグレーションが現れる。
チリを出国して、再びアルゼンチン入国である。
ああ、、、めんどくさ。

あとは一路ウスアイアへ向かうのみである。
相変わらず外の風景は変わらない。
広い大地があって、広い空がある。
海の向う側は南極である。えらいところまで来たもんだ。
パタゴニアの空は広すぎて、綺麗すぎる。日本に入ると決して感じることはできないような広さだ。それだけでもパタゴニアに来た価値がある。

何もない風景に、やがて緑のついた山が加わり、その背後には雪山がそびえる。
さらに湖が見え始めると、車窓の風景は桃源郷のような美しさ見せてくれる。
でっかい湖に夕日が映り、雪のかかった山をピンク色に染上げている。
カメラカメラ!ああ、壊れてた。くそ、マゼランめ。

日は夜の9時半にようやく沈み、そのころようやくウスアイアにたどり着いた。
港にはでっかいタンカーが行き来している。
目的の上野山荘へは、夜が遅いということもあり、その日は近くのユースホステルへ宿を取った。
そして、免税店の多いこの街の電気屋で、最安カメラを購入した