イスタンブール。やっぱりサッカーの試合を観戦する。
トルコ、といえば?
サッカーなんですね。これが。
コレを観ずにはいられない。
早速イスタンブールをホームに置くチームの試合日程をチェックする。
すると、、、。
あるではないか!
トルコリーグ、ガラタサライの試合と、その2日後にフェネルバフチェのチャンピオンズリーグの試合が!
ガラタサライは近年日本でもそこそこ有名な稲本選手の在籍していたチーム。
フェネルバフチェは昨シーズンまであのジーコが監督を務め、あのロベルトカルロスが所属している強豪だ。
イスタンブールに着いてから風邪と熱でフラフラになっていたのだが、そこはサッカーのため。スリッパッを引きずる様にツーリストインフォメーションへいった。
そこのおっさんによると、どうやら新市街の本屋でチケット販売をやっている模様。路面電車のトラムを乗り継ぎ、目的の本屋へ向かった。
新市街はいわゆるおっしゃれーな街で、ヨーロッパ調の建物の間をチンチン電車がかわいく走っている。
その一角の本屋に入ると、トルコ語で「チケット(ビレット?)」と書かれている。
二階に上がるとちいさなブースで兄ちゃんが一人座っている。
「ガラタサライの試合のチケットはあるか?」
「あるよ。」
「じゃあフェネルバフチェの試合は?」
そういうと、兄ちゃんは軽くうなづいた。
兄ちゃんはどちらかのファンなのだろうか?
街中のトルコ人たちにサッカーの話を持ちかけると、必ずといっていいほど、フェネルバフチェ派かガラタサライ派に別れ、俺そっちのけで議論が始まっていた。
この両チームのダービー戦では暴動やけが人、死者までも出ることがあるという。
「これからガラタサライの試合を観に行くんだ。」
というと、手にしていたコーヒーカップをくずかごに投げつけ、
「俺はフェネルは嫌いだ。」
とハードボイルドを決め込むおっさんもいたあたり、熱狂は本物と言ってよいと思う。
手持ち最後のバファリンを飲み込み、ガラタサライの試合会場へ向かった。
地下鉄の駅にはまったくサポーターらしき人間は見えない。
もうすぐキックオフだというのに。
スタジアムが近くなると、目の前を駆け足で走り行くガラタサライサポーター家族が横切っていった。
おお、やっぱりいるんじゃねえかとチケットを提示して中に入る。
まるで難波の街中にあるよな、なんともど真ん中にスタジアムは立っている。
中に入ると、スタジアムは人でぎっしりと埋まっている。
単に皆さん入るのが早かったようで。
そしてその応援。
日本のように「黄色い声」が入っていない。
ヤン車顔負けの重低音の応援。
漂う「本物」感。
ガラタサライが先制すると、地震のようにイスが揺れる。
同点に追いつかれるも、敵チームの見事なゴールに会場から拍手が起こる。
イエローカードに耳をつんざく口笛とブーイング。
巧みなプレーや守備には惜しみない拍手が送られている。
結局ガラタサライが4点を入れ、圧勝。
応援歌が通りをこだましていた。
俺が言うのは恐縮だが、サッカー知ってるな。という感じなのである。
その2日後、フェネネルバフチェの試合を観にフェリーで海を渡った。
ヨーロッパ側の向かいにあるカドキョイがそのホームだ。
この試合は二日前観に行ったトルコリーグとは違い、ヨーロッパ中のクラブナンバーワンを決める、チャンピオンズリーグというカテゴリーの試合で、今節はウクライナのチャンピオンチーム(昨年は実際は違うが、、、二位とかでも出れるいろいろ長いルールがある。)、ディナモキエフを迎えての試合であった。
昨年ジーコの下、リーグ優勝を果たし、チャンピオンズリーグでもクラブ史上初のベスト8入りを果たしている。
しかしながら今年は監督交代に伴うチーム強化がうまくいっていない。
リーグ戦でも中位に低迷している。
そのためか、サポーターの気合も相当なものがあった。
手に入れたチケットは全席指定で、うろついて見つけた座席はゴールの真裏。
ガンガンに気合の入ったサポーター席である。
投げかけられる好奇の目線。
全席に座っていた少年が、
「フェネルバフチチェ!ユーー、ラブ??」
と聞いてくる。
「イエス!アイラブ!」
というと周りのサポーターたちもホッとしたような笑顔を見せてくれた。
チャンピオンズリーグお決まりのテーマソングが流れ、すさまじい声援の中キックオフ。
ディナモキエフは侮れない。つねにチャンピオンリーグに顔を出し、ときには天文学的な財力を持つチームを倒すこともある古豪なのだ。
後ろの兄さんは敵チームがボールを持つと、その指と口のどこからそんなでかい音が出るんだというくらいの音でピーピーやっている。
耳が痛い。
フェネルバフチェは結局最後までペースを握れなかった。
今ひとつパッとせず、すっきりしない内容。
0-0のスコアの中、スタジアムはブーイングの嵐に包まれていた。
そんな中でも前席の少年の愛は本物だったようだ。
俺のほうにもう一度、
「ユーラブ!?フェネルバフチェ??」
俺がうなずくと、握手を交わし、大声で愛するチーム名を歌いながら人ごみに消えていった。