ジェラシュ。遺跡を観つつ、北上する。
アンマンに三度も舞い戻ってきて、ジェラシュの遺跡へ行く。
こちらも2000年前のもの。自分でもいい加減遺跡は飽きてきてるんじゃないだろうかと思っていたが、これはこれでよかったのだ。
肌色の巨大な石柱が立ち並び、例のごとくローマ劇場がそびえる。
奈良県にある平城京跡のような感じで、「打ち捨てられている」状態。都市の様子がよくわかる。
アルテミス神殿は十分迫力を保っていたし、石柱の壮観な並びは見事だった。
遺跡なんてのは興味ない人にとっては瓦礫以外のなにもんでもないだろう。
過去には興味ない、という人もいた。
歴史を知って、過去に思いを馳せるということは、人間の現在の立ち位置を明確にする手段になる。
ああ、こんな時代あったんやなあとか、こんな発展してきたんか、とか、えらい戦争をしてきたんやなあとか。
現代は発展しすぎた世の中だが、過去の土台を知ることから学ぶことはまだまだ多いんではないか。
最先端技術を手に入れても、人間の本質は1万年前と何も変わってないように思えるからだ。
おおげさだけど。
翌日、アンマンからシリアのダマスカスへ向かうバスに乗った。
アンマンからダマスカスまではダイレクトバスが出ている。
国境までは1時間半ほどであった。
レバノン人のおっちゃんなんかとのんびり話をしながら、順調に出国手続きを済ませた。
シリアへは、イスラエル入国の痕跡(あらゆるボーダーの判をみられる)がなければスムーズに入国できる。
ビザがあれば。
共に出た大学生のカジ君は日本でビザを取得していたため、驚くほどあっさりと入国スタンプをもらう。
しかしながら俺はビザを持っていない。
近年周辺国大使館でビザの発給を行っておらず、国境で取れるという情報だけを頼りにパスポートコントロールへむかった。
エジプトから比べると、人の顔が違ってきている。
アラブ人なのだろが、入管のおっちゃんたちの肌の色は白くなってきている。
シリアを越えて、トルコを越えると、そこはもうヨーロッパだ。
少しずつ来てるなあ、、なんてふけっていると、バスの運転手と助手が走ってきた。
「早くしろ!!」と
「いや、待てっていわれてんねんけど。」
「ほか乗客が待ってるんだよ!置いて行くぞ!」
それは困る。窓口を3人でどんどんたたき、催促する。
イミグレのおっさんは団体トルコ人の判子押しで必死だ。こちらに見向きもしない。
パスポートを無理やりねじ込むと、隣の「BANK」と書かれた窓口を指差した。
殺到しているアラブ人をかき分けて、窓口にパスポートと50ドルを放り投げた。
レシートとお釣りが返ってくる。
24ドルしたようだ。レシートをイミグレのおっさんに渡すと、ようやくシリア入国のスタンプが押された。
3人で走って戻るとバスはすぐさま出発した。
カジ君とレバノン人のおっちゃんから「グッドラック!」という祝福の言葉をかけてもらった。
確かにそうだった。実際次の日にシリアにやってきた台湾人のジャンは、バスに置いていかれていたのだ。
シリアの地をバスが駆けている。左手には緑の木々に太陽が落ちようとしていて、夕焼け空にブーメラン型の雲が広がっていた。
雲を見たのも、緑を見たのも久しぶりな気がする。
目的地、ハンガリーを目指す。北上し続け、変わってゆく景色を楽しんでいる。