エルサレム。魔の国境を越える。
世界で最もややこしいと思われる国境越え。イスラエル。
エルサレムにあるヘブライ大学に短期留学するという男性とともに、ヨルダンのアンマンからミニバスで国境へ向かう。
東へ40キロほど行くと、あたりが急に荒れてくる。
その道をさらに突き進むと、「キングフセイン橋」の表示が見えてきた。
ここのイミグレーションで出国、そしてそしてイスラエル側での入国スタンプを押してもらうわけにはいかない。
イスラエル入国の形跡が少しでもあると、シリア、レバノンほか、いくつかの中東の国々から入国を拒否されるからだ。
このあたりは宗教の発祥でもあるとともに、パレスティナをはじめとする、紛争のメッカでもある。
1948年にパレスティナにユダヤ人国家のイスラエルが建国された。
それと同時にイスラム各国との戦争に突入する。
中東戦争を経て、イスラエルは領土を拡大。
現在もパレスティナにおける入植を続け、土地を広げるとともに、土着していたアラブ人との共生は難しい状態である。
このくだりはかなり古くまでさかのぼり、細かい。また自分なりにまとめてみたいと思っている。
そんなわけで、シリア、レバノンへ向かうつもりの自分は、ここでは「ノースタンプ」を貫かねばならない。
ヨルダン出国は難なく「ノースタンプ」をクリアした。
バスを使ってイスラエルとの緩衝地帯を移動する。
ヨルダン、イスラエルも、1994年に和平合意したばかりで、こないだまでドンパチやってた仲なのだ。
イスラエル側のゲートの前で、入念にバスの中にチェックが入る。
バスに入って検査する兄ちゃんの片手にはマシンガン。
物々しく、緊張感がある。
1時間ほどたって、ようやくイスラエル側のイミグレーションにたどり着いた。
辺りは銃を持った兵士だらけ。銃口はこちらをむいている。恐ろしい。
3度の荷物チェック、ボディーチェックを抜けて、いよいよスタンプである。
窓口は8つほどあるのだが、どれも混雑している。
係員は若い姉ちゃんで、だるそうにガムかみながら仕事している。
前に並んでいるアラブ人一家が、愛想の悪そうな姉ちゃんから質問を浴びせかけられている。
電話をかけさせられ、おじいちゃんとおばあちゃんの名前を書かされ、あげくに後ろに回りなおせといわれている。
40分待ち、いよいよ俺の番。
しめた!ねえちゃんが会愛想よさそうなのに交代した!
なかなかのべっぴんさんだ。
「ハーーイ。」
「ハーーイ。」 (俺)
「目的は?」
「観光です。」(俺)
「どのくらい滞在ですか?」
「一週間です。」(俺)
「シリア、レバノンには行ったことがありますか?」
「ないです。」(俺)
「ノースタンプがいいですか?」
「はい!ぜひぜひ。」(俺)
「ホワアィ!?」満面の笑み
「、、、、、、。たぶん、、、。」(俺)
「多分行くんですね。はい、オッケーです。」
ドキドキしていたが、無事別紙にスタンプをおしてくれた。
なかなかおちょくってくれた。
この姉ちゃんのご機嫌で決まるわけである。
こんな仕事若いうちからしてたら、誰だって図に乗る。
結局俺の場合、シリア、レバノン、イランなどのスタンプがなかったおかげでスムーズにいった。
イミグレをでて、バスでさらに30分、山と山のあいだから、金色の岩のドームが見える。
大学のころよりずっと訪れてみたかったエルサレムが見えてきた。