宿屋の店主、日々のつぶやき。

旅好きが高じて宿を開業、自由な時間を求めて今日ももがいております。

ダージリン。はい、トイトレインです。




 さて、ダージリン
 紅茶とトイトレインである。
 
 しかし現在オフシーズンである。とともに、連日デモでおおさわぎで、なにやら観光という雰囲気は街から消えてしまっている。
 デモは長く、先に女性の列が声をあげながら歩き、その後を男性陣が歩く。
 口々に「ウィーウォンゴカラン!!」
 と叫んでいた。後で調べると「ゴカラン」とはグルカ人の「グルカランド」と言っているらしかった。
 このあたりの人々の顔立ち、服装、みなネパールに近い。
 インド政府とのいざこざも、ここで使われているネパール語を、政府が認めないということもあるらしい。
 インドからの独立を求めているのか。国からの独立など考えたことのない僕からは、独立することの喜びとはどんなものなのか、想像もつかない。ネパールではチベットの難民キャンプもあちこちに点在していて、多少考えることもあるが、結局彼らの本当の苦しい部分は理解できない。
 旅をしてきて、いろんな世界の現実を垣間見るたび、日本の中でいきまいていた正義感なんぞ、そら恐ろしいほどショーもないことだと思うようになってきている。
 
 2000メートル以上高地にあるダージリンは息が白くなるほど寒い。そして雨ばっかりであった。
 そこから見られる雄大な眺めも、早朝の短時間であっというまに霧に消える。
 だからこそ、たまに見せてくれる山脈の眺めは目んたまがつらぬかれるほどきれいだった。
 
 肝心のトイトレインは、デモの影響なのか土砂崩れなのか、通常の便は動かない。
 ダージリン、ニュージャルパイグリ間、約80キロ、時間にして7時間半の行程を味わうことは出来なくなった。
 しかし一区間だけ、観光客用の15キロ分だけ運行がある。
 最低乗客6人以上、通常20ルピーほどで行けるところを、なんと240ルピー払って、乗ることができるのである。
 朝一で切符を買いに行った僕と相方は、予約が自分たち2人だけであることでトイトレインを諦めていた。
 しかしたまたまネットカフェで居合わせた日本人観光客3人が、なんとしても乗りたいので、あと一人分の券を買ってでも乗りたいという。
 一人300ルピー(800円くらい)ですか、、、。一区間で、、、。うーーむ。
 しかし彼らの勢いに押され、
「あ、、い、行きましょうか。」
 と生返事を返し、相方に睨まれつつも、トイトレインに乗ることに。トレインジャック状態である。
 駅長さんは好意的な人で、ジャパンマネーで列車を動かすことに積極的に働きかけてくれた。
 しばらく動かしていなかったせいか、線路の草抜きから始める始末である。
 石炭を入れ、汽笛が濃霧のなかに響き渡った。
 久々の出発に道行く人々も足を止めた。
 かくしてジャパーニのジャック状態となったトイトレインはかわいらしい車体を揺らしながら山を下ってゆく。
 線路の幅は人間がやっと一人通れるくらいの、見たことのないくらいの狭さ。
 汽笛の音がおもちゃのように高い。
 そして遊園地のそれのようにやたら遅い。いや遊園地のヤツのほうがむしろ速い。
 うーーむ。まさにおもちゃ列車。
 
 汽笛を聞いて、人々が窓から顔を出し、玄関に出て笑顔で手を振ってくれる。
 線路のすぐ横は断崖絶壁。絶景が広がるはずが、すさまじい霧。
 それでも往復2時間の旅はなかなかに楽しいものであった。
 
 
 写真1枚目  デモする人々。声高らかに行進中。
 写真2枚目  一瞬見せた、ダージリンの絶景。もう少し前だと晴れの日がほとんど。雨季以外を狙え
 写真3枚目  トイトレイン。かわいい。とにかくかわいい。