宿屋の店主、日々のつぶやき。

旅好きが高じて宿を開業、自由な時間を求めて今日ももがいております。

バラナシ。聖地バラナシ。




海風そよぐプリーを発って、寝台列車に乗り込んだ。
あまりにもこの土地に長くいたので、少々感傷的だ。
その日サンタナからは4人がバラナシへ向けて出発。
約20時間の旅。
始発のプリーではまだまだベッドは空いていたが、駅を過ぎるたびに人で埋まってゆく。
それと同時にたくさんの物売りや物乞いが列車に入ってくる。
お菓子、惣菜、弁当、水、おもちゃ、、、。列を成して売りに来る。物売りのお兄ちゃんたちは日本人とみるや隣に座って人懐っこく笑いかけてくる。するとたちまち周りの人たちも大きな目を向けて、珍しげにながめる。こういう子供っぽいところが好きなのだ。

ある駅でポテトチップスを買う。服が引っ張られる。見るとボロボロの服を着た子供達が2人手を差し向けている。
「ヘロー!ヘロー!」
気付かぬ振りをして列車に乗った。子供らのうちの少女は座席の位置を確認して、車窓ごしに手を向け、「ヘローへロー!」を繰り返す。前の席の中年くらいのインド人夫婦は子供に一喝したが、変わらない。
10分たっても帰らない。少女は一直線に俺のほうに「ヘロー!」攻撃をする。
なんだかなあ、、、。無視している俺が、とんでもなくワルモンに思えてくる。
1ルピーくらい、渡そうかなと思った矢先、前のインド人夫婦がお金を与えた。
少女はこちらに一瞥もせず、夫婦にさえも一瞥せずに走り去っていった。
夫婦の奥さんは、「しょうがない子ですね。」と思っているのか、肩をすくめて笑いかけてくれたが、笑顔で返す事は出来なかった。
列車の物乞いの人は多様だ。
目がつぶれた人、腕が曲がっている人、ずた袋を下げた子供、両足がないために通路をはって物乞いする人、きれいな女の人だと思ったら、ヒゲがうっすら生えている。オカマも物乞いをする。彼らはじっと見つめて手を差し向ける。
それらの人たちに、インド人夫婦は小銭を与えていっていた。
そうや。その国の人が面倒見るべきなんや。1人にあげだしたらキリ無いし。
そんな風に自分に言い聞かせながら、つっかえる思いを感じた。

物乞いに対する。インドに来たら避けられないことか。考え方は人によって違うので、どうとも言えない。ボランティアなんかについてもそう思う。
コルカタにはマザーハウスという福祉ボランティアの施設がある。命の末期の人たちも多いのだそうだ。日本人旅行者にはその経験者が多い。そのボランティアについて効率的に考える人もいれば、心療的に考える人、宗教的に捉えている人もいる。ある男の子がいうには、「医療施設の目線で見れば、もっと人の命が救える施設に出来るはずだ。」という意見もある。そしてそれに対する反対意見もきっとある。

考えてもしょーがねえ。
そう思いがちで、自分もそう思うが、
そんな答えが出ないような議論でも、答えだそうとぶつかり合ってる姿には感心せざるを得ない。
まだまだ熱い日本人。ええんじゃないかと思う。

列車がガンジス河を越えた。
駅に着くとオートリキシャーのおっさんが群がってくる。
いよいよ聖地バラナシへ着いた。
ものすごい喧騒、ゴミの山、鼻をつく臭い。そして聖なるガンジス河。
人間臭の国、インド。その最もインドらしい街にやってきた。