宿屋の店主、日々のつぶやき。

旅好きが高じて宿を開業、自由な時間を求めて今日ももがいております。

アウランガバード。人間の成した事。




ぶっ倒れそうな暑さのなか、バナナ片手に街をうろつき、おもむろに熱いチャーイをすする。
うーーむ。エレガント。なんでこんなに暑いのに、こんなに熱いチャーイがうまいんだ?日本では紅茶などほとんど飲まないが、インドに来て一杯10円ほどのこればっかり飲んでる。なかなかインドが板についてきたんちゃうけ!?
と思う最近。

エローラ、アジャンターの世界遺産以外特にすることもない所だが、人々が陽気でなかなか楽しい町だ。カメラを持っていたら俺を撮れあたしを撮れとばかりに近づいてくるし、いろんな人が気軽に[ハロー!]と声をかけてくるのだ。

世界遺産エローラは、アウランガバードから30キロほど離れたところにある、石窟の寺院だ。その歴史は7世紀から8世紀という、日本でいえば大化の改新あたりか。仏教の石窟からヒンドゥー教ジャイナ教の石窟まで、やく33の石窟があり、最大の見どころは、100年がかりで一つの巨大な岩山を人間の手で削って、形を整えて寺院にしちまったという、カイラーサナータ寺院。すごかった。俺の中ではアンコールワットを凌ぐ凄さだった。
なぜいろんな宗教の寺院が入り交じっているのかというと、まず5世紀ごろまでインド全域では仏教が盛んだったようだが、アーリヤ人らの侵入や、様々な民族の勃興、侵略により、次第にヒンドゥー、ジャイナの保護が強まり、仏教の力が薄れていったようだ。北インドで前5世紀に釈迦によっておこった仏教が、日本の奈良朝で根づき始めるころには色あせ始めているというのは、実家の奈良から旅を始め、中国から東南アジアの仏教寺院を眺めつつ、旅してきた僕にとって、感慨深いものがある。
今でこそインターネットを使って伝達は一瞬だが、当時は仏教がおこり、日本に伝わるまで1000年の時間を有している。その人類のチャレンジに感動し、この道のりを2カ月余りで旅して来れた幸せを、ひしひしと感じる。人間って、すげーな。

エローラの帰りにダウラターバードという超巨大砦、これも岩山を削ってそのまんま砦にしたのん、をまわった。13世紀ごろにつくられたものらしい。雄大である。デカン高原の荒涼とした風景に、恐ろしいぐらいにマッチしている。なんでこれが世界遺産ではないのか!?その雰囲気は中世の時代を感じることが容易だ。現在も砦として利用されているといわれても、違和感がないだろう。てっぺんまでは長い長い階段をはい上がってゆく。相当な運動だが、てっぺんからは街の様子や遥かかなたの高原まで眺めることができる。てっぺんでは水を振る舞ってくれていて、ぬるい水がやけにおいしかった。ほとんどがインド人の観光客であったが、みな気さくに声をかけてくれた。しかしスケールデカい!!やっぱ人間って凄い!


結局ドライバーのアブラダさんもいい人で、仕事を誠実にやってくれた。14時ごろに突然モスクの前にトゥクトゥクを停めて、[ちょっとだけ待っててくれ。]といってお祈りをしに行っていた。敬虔なイスラム教徒であることがうかがえた。彼はムスリムなのでお酒もやらない、たばこも吸わない、真面目なおっちゃんであった。
インドに来てからというもの、宗教を感じない日はない。その宗教に根差した生き方は、今の日本にはない価値感を感じさせてくれそうだ。