宿屋の店主、日々のつぶやき。

旅好きが高じて宿を開業、自由な時間を求めて今日ももがいております。

チェンマイに関係ないこと。




 チェンマイの雰囲気はなんだか非常によろしい。
 なにがよろしいかと言うと、路地裏なんかがいい。
 バンコクの路地裏ではちょっと危険な香りとヘドロのような臭いが強烈で、そのへんに宿をとろうもんなら、その臭いから逃れられない。
 しかしチェンマイのはおっとりしていて、太陽の光がしっかり当たっていて、やしの木みたいなのが日陰をつくってくれている。その風景が、遠い徳島の田舎の風景を思い出させてくれた。じいちゃんの家から虫捕りや魚とりに行った道と青空がオーバーラップした。
 そんなわけで良いところだ。11日ころから4、5日かけてソーンクランという水掛祭りが行われる。なかでもチェンマイのは激しいらしく、俺もそれにあわせて北上した。
 バンコクから12時間、巨大な夜行バスの60人あまりはすべて外国人(タイ人以外)。そのバスが2台連なってばく進する。まるでドナドナの子牛のようにピストンされていった。
 
 ネットをあけると、藤原紀香カンボジアに小学校を建てたらしい。すごいことだ。だって、女優とはいえ小学校建てるってすごいことやで。
 カンボジアシェムリアップの公園で座っていたら、バイクを停めて近づいてくる若いカンボジア人がいたいた。「日本人ですか」「どこに泊まってるんですか」「仕事は何をしてるんですか」と英語で話しかけてきた。感じはよさそうなやつで、話してゆくと、自分は孤児で、孤児院で育ち、今は孤児たちの小学校で英語を教えているんだと。そしてたくさんの写真や、授業風景、教師たちの写真などを見せてきた。そして、「英語の教科書は一冊0,5ドルで買える。裕福な君たちに、寄付をお願いして周ってるんだ。」といって、ノートを取り出して俺に見せた。そこにはたくさんの外国人の名前と、メルアド、メッセージ、そしていくら募金したかが書いてあった。その金額は20ドルから50ドル、中には100ドルというものまであった。
 おんなじことがベトナムでもあった。フエの王宮を周っているときに、教師だと名乗る感じのよい25歳のベトナム人が、アンケートを取っているから、5分だけ時間をくれといってアンケートにお記入した。そのあと同じようにノートを取り出して、「子供たちの爪楊枝をつくる事業に募金してくれ」と、名前と金額の載ったノートを見せた。そこにも同じように20ドルから100ドルくらいの金額が書かれていた。青年はカバンから写真やら、日本人の手紙やら、あれやこれや取り出して、「気持ちでいいんだよ。君たち裕福な外国人にお願いしているんだ。」と。
 それが本当なのかは分からない。でも気持ちのわりに、みんなそんなに簡単に何十ドルもだすか!?日本の駅前の募金にはたまにコインを落とす。10円とか5円だ。俺は今収入源がない。そのため1ドルでも惜しい。せこいけど。だから1ドルだけ渡した。青年はちょっとがっくりした表情を浮かべて、すぐに後ろを歩いていた欧米人の老夫婦に声をかけていた。
 彼が本当にそれらで得た金をまるごと寄付にまわしているかは分からない。釈然としない気持ちになったのはお金のことじゃなくて、実際に自分がそれらをこの目で見て寄付したというのではないからだ。それ以来、こういったものに一切耳を傾けなくなった。
 公園なんかで座っていると、結構この手のものが多くて、「日本人ですか?」ああ、来たね。って感じで、話だけ聞いてお金の話になるとサクッときびすを返すようになってしまった。ちょっと自分でも冷たいかなと思うくらい。
 だから、このカンボジアの青年にも、「君の話はよく分かった。でも俺は自分の目で見たもんにお金を出したいんや。だから今はだせんよ。1ドルも。ごめんね。」と、ざっくりと断った。彼は最後まで「数ドルでいいんだ、、、」と消え入りそうな声で帰って言った。

 このカンボジアの青年はほんとに感じのよいやつだった。いやみがなくて、目が澄んでいたように思う。それでもたったの1ドルも渡せなかった。それなら直接その小学校へ行って渡したい。彼はうそをついているようには思えなかった。でも、見えないものにお金を出せなかった。

 だからこそ、藤原紀香がやったことはすごいと感じた。ばちこーんと小学校建てて寄付してもうたんやから。おそらく偽善とか、イメージアップとか、言うやつもおるんやろうな。でも例え偽善でも、された人たちが良くなる偽善なら、いくらでもよろしいんじゃないかと思う。
 寄付とか、ボランティアとか、本当にその人たちに必要なんやと納得したときに行いたい。これはいろんな考え方の人がいるだろうな。改めて自分にできることを考えたりした。

 旅前と比べて、何らかの変化を感じる。それは気を張っていたり、いろいろ考えることが多いからかもしれないし、日本と違う経済観念の国を周ってきたからかもしれない。いいのか悪いのか、そこんとこはよくわからん。
  
 チェンマイはいいとこです。
 
写真1  バンコクチャオプラヤー川。何か見忘れてると思ったら、これやった。
写真2  チェンマイ国立博物館。チャリで30分でつきます。
写真3  チェンマイのどこぞのお寺。